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高森明勅
2016.7.9 00:37

「憲法違反」の参院選

本人が既に期日前投票を済ませておきながら、今更こんな話を
持ち出すのは変かも知れない。

でも、やはり指摘しておく必要がある。

この度の参院選は「憲法違反」状態の“まま”行われる。

メディアは、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたと大騒ぎ
しながら、
何故かこの点には殆ど触れないが。

勿論、参議院の選挙制度の本来あるべき姿については、様々な議論が
あり得る。

地域代表として、各都道府県の議席を人口に関係なく、全て同数に
すべきであるとか。

民間の言論人なら、持論を大いに開陳すれば良い。

だが、国会はそうはいかない。

憲法「尊重・擁護」義務があるからだ(第99条)。

法律などが憲法に適合するか否か、
最終判断を下すのは言うまでもなく
最高裁(第81条)。

その最高裁が平成22年の参院選を、“一票の格差”を理由に
違憲状態」とした(平成24年10月)。

「国権の最高機関」(第41条)たる国会の面目、丸潰れ。

立法そのものの信頼性も揺らぐ。

そこで国会は、今回の参院選“までに”格差を(違憲状態を解消できる)
最大「2倍以内」
に収めるべく、選挙制度の改革に着手。

ところが、民主党(当時)や公明党が独自案を作り、それぞれ
それなりに真面目に対応しようとしたのに、自民党が徹底的に“抵抗”。

その結果、知られているように「10増10減」でお茶を濁した。

これでは格差は最大3倍(!)を超える。

明らかに“確信犯”の「違憲状態」。

その改正公選法の附則には、次のような文言が。

選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、
必ず結論を得るものとする」と。

法律自体の中に公然と“先送り宣言”を書き込むとは。

呆れた度胸だ。

それとも、こんな“呪文”を入れておけば、違憲を免れるとでも
思ったか。

前自民党参議院幹事長で、
選挙制度の抜本改革を目指して更迭された
脇雅史氏は、法律に「
必ず」と書かれている異常さを指摘する。

「そもそも法律には『必ず』なんて文言は存在しない。必ずやることを
定めるのが法律なのです。
そんなおかしさを誰も指摘できないまま、
法律が成立してしまった」と。

これで参院選の結果、改憲勢力が3分の2を取って、恥も外聞もなく
改憲を発議するなんて展開になったら、
目も当てられない。

これほど「憲法」という仕組みそれ自体を蔑(ないがし)ろにする
振る舞いはあるまい。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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